横浜汽車道ボードウォーク改修工事

On 23. 07. 2024 by sai1525

横浜市を代表する観光スポット「汽車道」のボードウォークの改修検討の依頼があったのは2022年の春ごろでした。「汽車道」は臨港線の廃止に伴い、軌道(レール)を残したままボードウォークにするという歴史を継承するアイディアが当時は斬新でした。1997年の整備だったので、今年で27年が経過したことになります。今回はこのボードウォークを生まれ変わらせるプロジェクトです。

汽車道の歴史

汽車道(きしゃみち、英語: Kishamichi Promenade)は、神奈川県横浜市の桜木町駅前と新港地区を結ぶ、鉄道廃線跡を利用して1997年に開通した遊歩道である。港湾環境整備施設(港湾緑地)として整備されている。
※出典:ウィキペディア

汽車道はもともと「ウィンナープロムナード」と呼ばれていたが、1996年(平成8年)に行われた名称公募により改称された。1911年(明治44年)開通の旧横浜駅と新港埠頭を結ぶ臨港線(通称「税関線」とも)の廃線跡を利用し、その一部にあたる約500mの区間をレールも残した上で緑地として整備したものである。

この臨港線は当初貨物輸送目的で作られたもので、新港埠頭の横浜港荷扱所(後に横浜港駅へ昇格)を経由して岸壁や倉庫の前、さらに横浜税関構内の荷扱所まで結んでいた(詳細は「高島線」の項を参照)。一方、1920年(大正9年)からはサンフランシスコ航路の出航日に限り、旅客列車(ボートトレイン)の運行が行われるようになった。戦後は米軍により一時接収されたが、1952年(昭和27年)に返還され、以降1961年(昭和35年)の氷川丸の最終航海時まで旅客運送が行われていた。

その後、貨物支線としては1986年(昭和61年)に廃止となったが、1989年(平成元年)の横浜博覧会開催時にはこの路線を利用して会場ゲートがあった桜木町駅近辺(日本丸駅を設置)から山下公園の氷川丸付近(山下公園駅を設置)まで旅客列車(気動車)の運行を行い、博覧会終了とともにこの区間も廃線となった後、1997年(平成9年)に汽車道として整備されるに至った。

どう生まれ変わらせるのか。

上記の通り、線路の軌道をそのまま残した構造のため、レールを支える枕木の腐朽が気になりました。一方、横浜市はみなとみらいのボードウォークがひとつの基準となっているようで、床板(デッキ材)には厚み40mmのイペ材が使用されており、周辺のボードウォークやデッキでは40mm厚のデッキが採用されてきました。汽車道も同じ40mm厚のイペ材で、現在では入手困難な贅沢な材料です。

当時はなぜこんな贅沢な板厚が必要なのか不思議だったのですが、みなとみらいの整備から30年以上が経過し、その改修工事に携わるうちにその答えが見えてきました。そう。根太などの下地材が腐朽しても床板はまだまだ使い続けることができるのです。2018年の6月8日にも今回の工区に隣接する川沿いのボードウォークを改修した記事を掲載していますが、しっかりと劣化診断を行い、劣化状態を数値化することで、リユースできるものと廃棄するものを分別します。今回もしっかりと劣化診断を行い積極的に再利用を促進しています。

さらに一工夫を。

前回までの工事は、汽車道から一段下がった川沿いのボードウォークの改修でしたが、今回はメインとなる「汽車道」で観光や通勤などの利用者数は桁違いに多いのです。そこでデッキ材を再利用するだけでなく、もっと価値をつけリニューアル感を出そうと、現場から取り外したデッキ材を工場へ運搬し、表面に滑り止め機能を兼ねたデザイン加工を行う提案をさせていただきました。

既存のデッキ材は新規材と違い、反っていたり石や金物が付着している可能性が高いため、プレーナー加工などを行うことはできません。そこで開発したのがピールド工法です。劣化原因だった「根太材の腐朽」を腐食に強いZAM鋼板に更新することで解消し、既設デッキ材に表面加工を行い現場へ戻す工法です。

施工を担当したサイアスによると、デッキ材を外し軌道が露わになった現場にたくさんの鉄道ファンが集まられたそうで、注目度の高さがうかがえました。

これは工事が完了し、施設が開放されたあとの写真です。滑り止め兼デザインの「波型」の模様が連続しているのがわかると思います。これはデッキ材の長さに対し波のピッチを正確に割り付けることで、模様が連続するようデザインしています。この波型のデザインはsaiブランドの「定番」なのですが、港町横浜にもよく似合うデザインになったのではないでしょうか。

今年度は汽車道と同じように徳島市でも既設デッキ材を再利用する改修工事が予定されています。2007年に鹿児島港ボードウォークの改修工事を皮切りに既設デッキ材の再利用を提案してきました。鹿児島港の実績から15年以上が経過し、今ではSDG’sという全世界的な動きが背中を押してくれています。
今後もこのような動きが加速し、地球環境にやさしい工事が日本全国、そして世界へ展開されていくことを期待したいと思います。

輸入木材を廃棄(焼却処分/サーマルリサイクル)するのではなく、再利用(リユース)することで、相当量のCO2を削減することができます。 過去に徳島市のボードウォークを事例にCO2の削減効果を計算した事例がありますので、興味のある方はぜひご覧ください。

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