スリットデッキの特許を取得しました

On 17. 03. 2014 by sai1525

「海上に張り出したデッキが波を(下面より)受けることを前提とした構造を検討してほしい」
と沖縄県北部土木事務所様より依頼を受けた時のことが思い返されます。
老朽化した護岸を再整備し、親水緑道として整備する際に、自動車道の幅員に押され、ボードウォーク(歩道)を護岸から張り出した構造にしなければならない計画でした。
古巣の不動テトラさんと共同で取り組んでいた案件でしたが、消波=テトラという発注者様の意志による相談でした。
この相談をいただいた時に、被災事例として紹介された粟国島のボードウォークの倒壊は悲惨なもので、台風による風浪により、全延長の6割が激しく損壊したものです。
この事例を受け、県内で同じ失敗をしたくないという発注者様の強い思いがありました。

粟国島ナヴィの浜BW損壊

2011年5月31日 台風2号の影響で、粟国村の南東海岸に位置する浜の遊歩道(1050メートル)が673メートルにわたり、激しく損壊した。村が出した被害推計額は2億7000万円に上る。「琉球新報」提供

上記のような背景から、苦慮の末、揚圧力(デッキ下部から作用する波圧や風圧)を上方に逃がす構造を計画しました。
床板を縦使いとして部材強度を増すとともに、(この現場の計画では)1:1の隙間を開け、揚圧を抜きます。
同時に桁と根太といった構造部材を同じレイヤー(階層)に配置することにより、側面から作用する圧力を減じています。
そして完成したのが、下の写真のような構造です。

グリッド構造デッキ

本施設は本部港渡久地地区に立地し、市場から離島へのフェリーターミナルへの導線にあります。
よって観光客の利用も多く、この「透ける床」はリゾート感も高まり、設計した私自身は密かに満足しておりました。
しかし、それもつかの間、5月に検査を終えたばかりの本施設に戦後最大級の台風が襲い掛かり、本施設の後背地は新聞記事のような浸水被害に遭いました。

新聞記事「琉球新報」提供

この台風が通過するまで、東京で気を揉んでいたのですが、不動テトラ沖縄営業所のO氏が即座に現場を点検して下さり、全く被害が生じていないことを連絡してくれた時に、心からホッとした記憶があります。
構造計算上の安全率は、想定した外力の2~3倍程度なのです。
いくら計算を重ねても、自然相手では何が起こるか分かりません。
例えば大きな漂流物があり、そこに大波が発生してこのデッキの真下から打ち上げたら・・・・
と、最悪なケースを想定すればキリがありません。
3.11の震災など、人知の及ばぬ自然の力には敵う術もありません。
設計をする者としては、どこかで見切りをつけなければならないのですが、コストや景観、安全性はもちろんのこと、リサイクル性や長寿命化策等、あらゆる側面からの要求を満たすことのできるよう努力をしています。

スリットデッキの特許を取得しました

弊社がそうであったように、特許ひとつにしても様々な開発ストーリーがあるのでしょう。
権益を得たり、守ったりするるための特許を日々考えている企業もありますが、国際競争を強いられる会社には必要なことでしょう。
一方で、弊社の持つ特許はすべて国内の公共事業においてはフリーで公開したいと考えています。
公共事業において発明の機会を与えていただいたのですから、将来に向け、より良い公共施設をつくっていただくための恩返しとしたいと思います。

※水面や水面近くでデッキやボードウォーク等を計画される場合、お気軽にご相談下さい。

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