北明治橋橋梁補修工事(R2)
那覇市の中心部を流れる國場川。
モノレール「壷川駅」から國場川を渡ると、プロ野球巨人軍が春季キャンプを行う奥武山公園があります。
この壷川駅と奥武山公園を結ぶ橋が今回の舞台となる「北明治橋」。
竣工はモノレールの開通式と同日の平成2003年8月9日。
全長128m、全幅12.4mの規模で、 第13回那覇市景観賞を受賞した 人道橋です。
設置後12年を過ぎたころ、沖縄の販売店を通じて、木道部分の補修検討の依頼をいただきました。
検討後、2018年11月29日の沖縄タイムズに「このはし渡るべからず」という記事が掲載されました。
これは悪意のある表現ではなく、両端の木製高欄、歩道が腐朽しているので、安全対策として「はし(端)を通行しないよう」呼びかけたものでした。
傷んだ木道部にはプランターが設置され、利用者が端まで行けないよう安全対策が施されていました。
きれいに並んだプランターの植生がグリーンベルトのようで、これはこれで美しい景観です。木材劣化診断士の筆者としては、木材の腐朽が一層進行するのでお勧めはできないのですが、これは補修までの安全対策として、良いアイディアだったと思います。
このような経緯があり、 昨年度と今年度の2か年をかけて補修工事が行われました。
上の写真は先週、無事に検査に合格し、共用が再開されたばかりの北明治橋で、元請業者である有限会社内盛産業さんが撮影してくれたものです。
写真の左側の歩道は昨年度、今年度は右側の歩道が改修されました。
残念ながら、高欄は当社の製品ではないのですが、今回の補修工事で、歩道も高欄も耐久性の高い製品に更新されました。
その品質を確認するために、昨年の11月上旬、コロナ禍が少し落ち着いた時期を見計らい、発注者である沖縄県南部土木事務所、元請業者さん、商社さんと滋賀県にある製品製造工場へ検査に行きました。
当社から納入した製品は、木道を構成する床板(デッキ材)、根太材、専用ビス、支持脚ですが、このうち、床板と根太材の破壊試験を行いました。
設計値から算出した荷重以上の製品強度が出ているのか、実際に圧縮試験機で正確に計測します。
予定した荷重を越え、「設定値クリアです!」とアナウンスするのですが、 破壊試験なので製品が破壊する(折れる)まで載荷を続けます。
アナウンス後、しばらく載荷し、たわみ量が製品厚さを越え、最大限に達した時、 「バキッ!」と いう大きな音を立て、製品が壊れます。
毎度のことですが、この音は精神的に良くないです(笑)
しかし、実際に破壊する状況、破壊した数値を見学することで、「ここまでの力が加わらないと壊れない」、「壊れるとしたら、このように壊れる」 という立証をすることができるのです。
この検査を行うことで、強度の確認のみならず、大きな安心感を得ることができるのではないでしょうか。
上の写真は昨年の現場写真ですが、根太にはマリンランバーを採用いただいております。
この製品はガラス長繊維を硬質ウレタンで固めたものなので、〝腐る”要素がないのです。
改修前はハードウッドの〝イペ材”が使われていました。
イペは日本の気候条件に適応できる数少ないハードウッドなのですが、このイペをもってしても、わずか10年ほどで腐朽してしまった現場です。
この対策として「無機」の製品をご採用いただいたので、マリンランバーは必ずこの期待に応えなければなりません。
発注者からの期待や、品質に対する元請業者の視点など、工場検査でのやり取りを思い出します。
そんなことを思い返しながら、北明治橋の夜景を撮影に行ってきました。
橋長128mの両側に幅員2m×延長92.3mの木歩道が再整備されました。
延長92.3mの間にデッキ材の貼り方向を変えた〝デザイン貼り”の区間が3箇所あるのですが、この部分がライトアップされています。
夜の撮影は、影ができるので、昼間よりモノの陰影や凹凸がよくわかります。
車歩道部分の石材の凹凸も味が合って良いですね。
完成写真は、提供した製品がたくさんの人々にご利用いただいている姿を掲載したいのですが、コロナ禍の夜で、人出が少なく、高欄沿いに低くカメラを構えているとようやく前を人が通過してくれました。
沖縄へ本社を移転し、間もなかったため、ほとんど現場に顔を出すことはできませんでしたが、無事に完工されましたこと、工事関係者のみなさまにお礼申し上げます。
工事が完了したので、もう「このはしは渡れます」。
もっと言えば、「ぜひ、このはし(端)を渡って下さい」。
この橋からの風景をたくさんの人々に楽しんでいただけると良いですね。
発注者:沖縄県土木建築部 南部土木事務所
元請:株式会社玉新建設【北明治橋橋梁補修工事(H31)】
元請:有限会社内盛産業【北明治橋橋梁補修工事(R2)】
協力会社:株式会社沖坤/株式会社ケイテック沖縄