ジャグジーデッキ改修工事
横浜のとあるフィットネスクラブのジャグジーデッキを改修しました。
下の写真は改修前のもので、他社の再生木材が使用されていますが、
デッキ材が波を打って、さらに白華現象を起こしていました。
【再生木材も設計、施工を誤るとこんな症状が現れます】クリック:拡大表示
下部構造を見てみると、ジャグジーという「水場」にも係わらず、杉材が防腐処理を施していないまま使用されています。
【防腐処理を施していない構造部】
再生木材は、メーカーにより異なりますが、基本的に原料となる木材をパウダー状に粉砕していますので、いわゆる“繊維”がありません。
よって、ハードウッドのような強度は求められないものの、「棘(トゲ)が出ない」「ささくれを起こさない」等の安全上のメリットが享受できます。
このジャグジーデッキの場合も、室内プールに隣接しているため、利用者が素足でご利用になられます。
それゆえに現設計も、再生木材の「機能」を評価し、採用されたのでしょう。
しかし、現実としてはこのような状況となり、改修が必要となりました。
では、何故、再生木材がこのような症状になってしまったのでしょうか?
木材劣化診断士の見解から、想定されるのは次の2点です。
①下地構造
②デッキ材の材寸と目地のアンバランス
まず、①ですが、
本施設はジャグジーデッキです。
当然のごとく、水への対応を施さなくてはなりません。
ところが、現設計では前述の通り、柱、大引、根太という下地構造に「杉」が使用されています。
それでもせめて防腐処理がされていれば、もう少し寿命は延びたかもしれませんが、
根太材に、いわゆる「未処理」の角材が使用されていました。
【腐朽した根太材】
床板を留める根太材がこの状態では、当然のことながら、床材は固定されていないも同じ状態となり暴れてしまいます。
次に②ですが、
再生木材の多くは木粉とプラスチックの混成材です。
木粉をプラスチックで覆っているので、劣化しにくくなっているのですが、
他方、プラスチックが混成されているので、熱膨張を起こします。
熱膨張の係数は各社により異なりますが、
この熱膨張をどう制御するかが設計、施工の鍵となります。
この膨張、いわば伸縮ですが、
弊社では、夏(高温時)の伸びと冬(低温時)の縮みを勘案した設計、施工を行っています。
設計的な要素としては、基準材長を2mに設定しています。
これは、デッキ上をピンヒールでご利用される方を想定し、最大5mmの目地管理を基準としているためで、
夏冬の材の表面温度の度が約50℃となるため、この温度差で伸びが最大5mm以下となる材長設計を行っています。
施工的な要素としては、施工時の材温(材長)管理が挙げられます。
弊社の施工管理基準は日に4回の材長測定を行い、測定した材長により当該時間帯での目地幅を決定しています。
つまり、「材料が熱により伸びている状態であれば、目地を詰め、縮んだ状態であれば目地を広げる」具体的な指示を施工する時間帯ごとに定めているのです。
これを行わず、天然木と同じように目地を確保せず施工してしまうと、膨張した材料が互いに押し合い、冒頭の写真のような症状として現れるのです。
【今回の改修では根太にzam鋼板を使用】
また、最近、「デッキの目地から硬貨(コイン)が落ちるため、目地をなくしてくれないか」という相談を受けることがあります。
しかし、残念ながらコストアップなしに、この相談、リクエストに応えることはできません。
というのも、目地はデッキにとって大事な「機能」だからです。
この機能とは、
1.デッキ上に溜まった水分、ゴミを目地を通して下に落とす(水はけ/滑り止め)
2.デッキ下の蒸れた空気を蒸散する
等々が挙げられます。
もちろんコインの落下対策としては、デッキ下の根太間にネットを敷設する等の解決策はありますが、いざ、発注となるとそのコストに躊躇される方が多いのです。
一方で、このコイン落下に限らず、「できます。やります!」という業者の方もいらっしゃいますが、その結果、いたずらに製品寿命を 縮めることにも繋がり兼ねません。
適した材料を、適した手段で、適した箇所に配する。
「適材適所」 良い言葉です。
再生木材の持つ「安全性」「耐久性」を評価して下さるお客様が多い中、「適切な設計、施工があってこそ、この性能が担保される」ことを、sai-BRANDとしてはきちんと告知して行く義務があると改めて感じた現場でした。
【リバースウッドデッキシステム標準仕様 ビス仕上げ】
・デッキ材:138*20(中空材)
・ビス:どりどり君 M6*45(SUS410)
・根太材:70*40 t1.6/40*40t1.6 ハット型根太(ZAM)
支持脚:HOLLY HTZ-100BP(ZAM)