
現在、徳島市の中心部にある新町橋東公園の階段デッキを改修しています。1996年に徳島市東船場商店街振興組合さんが建設し、その後、徳島市公園緑地課へ移譲された施設です。この公園を起点に川沿いのボードウォークが300m続き、終点となる両国橋西公園まで改修が計画されています。このモノクロームのように見える写真は、改修前のもので、デッキ材は黒ずみ、下地の木材も腐朽が進行していました。それでも劣化診断調査をしてみると、デッキ材はカビや腐朽菌が繁殖していましたが、かなり健全な状態であることが判りました。さすがブラジル産イペ材です。
そこで、傷んでいる下地材を更新し、デッキ材を再利用する提案を行い、現在に至ります。

これは今週現場へ行って撮影した写真です。再利用し、表面をプレーナーで削り、現場へ戻したイペ材は本来の美しい木材の色を取り戻しています。階段の下3段にご注目をいただきますと、デッキ材を支える根太材が黄色いことに気づかれると思います。下3段は川の水位上昇により汽水に浸かるため、腐朽対策として、弊社のマリンランバー(ガラス繊維強化プラスチック発泡体)を採用いただきました。4段目以上は水に浸かる頻度は少ないので、特殊なメッキ処理をした鋼材の根太を使用し、コストダウンを図っています。
いやいや、今日はその話ではありませんでした。

この試算表は林野庁の監修したもので、建築物を新設する時に、木材の種類や比重、仕様数量を入力すると「これだけの量のCo2を閉じ込めることができている」ことを試算するものです。今回は逆の意味でこの試算表を作成してみました。木はその組成の70%近くを炭素で構成しています。目が詰まった広葉樹ほど大きな構成比となります。この現場で使用されているイペ材は気乾比重が1.03と、1を超える木材で、そう、水に沈むのです。
改修を計画する際、デッキ材を再利用しない場合は、77㎥もの外国産の木材を国内で焼却処分することになります。これにより発生するCO2量は126tにもなるということです。
1996年には、まだここまで環境意識は進んでいなかったので、積極的に外材が輸入されていました。外国の二酸化炭素を吸収し、育った木材を、日本へ輸入し、燃やす。カーボンニュートラルの観点からすると、かなり愚かなことをしてきたと言えるでしょう。
一昨日、徳島出張中に、大阪万博の「リング」が世界最大の木製構造物としてギネス認定されてというニュースを見ました。しかし、リングに使用されている木材はフィンランド製の集成材なのです。万博でリングを見て、素晴らしいと感じるか、愚かと感じるかは人によると思いますが、僕はどちらでもなく、現地へ足を運ぶことさえしないでしょう。そんな折、アメリカでは外国との貿易において関税をかける(上げる)大統領令が発令、4月2日から実施される見通しです。ここまで国際化した社会で自国ファーストはいかがなものかと思いましたが、成熟しきって膿が出始めた社会に、国内需給の重要性を再認識させる良い機会になるかもしれません。万博のリングを手掛けた人たち、万博終了後に、この大量の構造用木材(国内需要の2/3)をどう活用するんですか?もちろん妙案があるのでしょうね。