満天の星を眺めながら眠る夢

風を動力源とするヨットは、地球環境にやさしい乗り物だ。
saiブランドのオフグリッドは、このヨットから着想したものだと以前に書いたことがある。沖縄は本土と比較し、風に恵まれているように感じる。夏は南風、冬は北風が安定して吹き、それに対応するかのように、太平洋、東シナ海と季節によりフィールドを変え1年中ヨットを愉しむことができるのだ。とはいえ、車で走ると小さな沖縄本島だが、風だけで帆走るヨットには大きな島だ。
例えば、先週、友人の30ftのヨットを糸満から与那原に回航したのだが、26マイルの工程に6時間を要した。つまり4.3knot/h(約8km/h)と自転車の平均速度(15km/h)の半分ほどのスピードだ。沖縄本島一周は約300kmなので、この速度でノンストップで帆走を続けた場合、37.5時間かかる計算だ。ヨットにとっては大きな島なのだ。

37.5時間帆走り続けるためには、交代で海面を見張り操船するワッチが必要だ。このワッチについては、以前、TAKAが面白いエッセイを書いていたので興味のある方は読んでいただきたい。
話を戻すと、ワッチには当然、夜間の当番もあるので、安全を確保するために電気設備は欠かせない。他の船に自船の位置を知らせる航海灯の点灯はもちろんのこと、最近ではAIS(船舶自動識別装置)やプロッター(カーナビのようなもの)、オートパイロット(自動運転みたいな機能)などの電力を使った機器に頼ることが多い。エンジンが作動している時間は、同時にオルタネーター(発電機)が発電してくれるので、機器を動かすために必要充分な電力を得ることができるのだが、ヨットマンとは風だけで帆走るのを好む種族で、できるだけエンジンはかけたくない。そうなるとバッテリーの容量は減少する一方だ。なので最低二昼夜くらい電子機器を使い続けられるバッテリー容量はほしいし、昼間は電子機器を稼働させる電力以上の ソーラーパネルの発電能力がほしい。

今回、バッテリーの入れ替え作業を行った際、ソーラーパネルで発電した電力をコントローラーを介し、現役を退いたバッテリーに充電する試験を行ってみた。曇天でもパネルは20V以上発電しており、コントローラーからは12.5Vの安定した電力がバッテリーに供給され、あっという間に容量は100%に達した。電子機器の電力は2台のSRV(service)バッテリーから供給する仕組みにしているので、試験で問題がなければ、ソーラーパネルで発電した電力をSRV回路に流したい。

Nydellはまだレストアが続いているため、デイクルージングには出かけられるが、まだ、泊まりを伴った長距離の航海はキビシイ。あとはオートパイロットを装備すれば一連のレストア作業の第一章は完了する。
沖縄の離島の砂浜にアンカリングし、室内灯などの余分な明かりはすべて落とし、満天の星を眺めながら眠る。それが実現する日はもう近い。

投稿者: YUKI

株式会社saiブランド代表取締役。 30年前、オーストラリアで木橋に出会い、自然素材の可能性に魅せられる。 木橋やボードウォークの設計や、木製構造物の診断などを手掛けている。 2020年8月に本社を東京都墨田区から沖縄県糸満市名城に移転し、「オフグリッド」に事業として、ライフスタイルとして取り組んでいる。