語呂合わせのようだがジョーの店のジョージに世話になった。いい腕の靴職人でその道50年らしい。ハワイで暮らすと滅多に履く機会が減ってしまい、持ってきた革靴も出番が無い。それでも、ちょっと洒落たレストランへ出かける時は素足にローファーくらい履いていきたい。大人になったと感じたことに足の大きさが変わらなくなったと思う人も多い。どういうわけか体形が変わっても足のシェープはあまり変わらないものだ。
ヨーロッパに居た頃、あの堅実で剛健なドイツ人が「靴はミラノ製が限る」と言っていた。「イタリア製」と一括りにしないところに意味があって、北イタリアは日本人の持つラテンのチャラチャラしたイメージに反して、真面目で勤勉、代々繋がる職人が多く、ブランドを冠した靴もそうした職人達に支えられている。良いなめし革は適度な蒸気を含むと足に馴染み、やがてそれは量産される多くと違い、靴が足に合ってくる。決して足が靴に合うのでは無い。お気に入りのローファーは靴底が薄く、その費用だけで新品が買えるくらい貼り替えてきた。「もう無理かな」と持ち込むと、「これはいい靴だ、まだ履ける」とジョージに諭され修理した。それにしても20年も履くことになろうとは思いもしなかった。
20年前といえばちょうどユーロが導入された頃で「ミレニアム」に沸いていた。そして2015年までの国際的な開発目標MDGsが発表され、全ての国連加盟国が合意した。その後の最終評価によると、貧困や教育は改善したが国や地域、性別や年齢の格差が浮き彫りとなり、新たに設定された2030年までのSDGsは、「誰ひとり取り残さない」が基本理念となった。ここハワイでは六つの地域目標を掲げ、アロハプラスチャレンジという。クリーンエネルギーへの転換や地元産食料供給拡大、自然資源の管理、廃棄物の削減、それにスマートコミュニティの形成、グリーンジョブと環境教育と続く。島国だけに限られた資源をより有効に大切に使うことを基本にしている。最近は観光でさえ、海岸清掃や植樹、文化継承の野外体験ツアーが人気になりつつある。
発想を変えてハワイには土産物屋を並べるより、一見必要のなさそうな靴職人の店が必要なのかも知れない。ジョージの顧客であるボビーはハワイ滞在の間サンダルを履き、持ってきた革靴を修理に出すらしい。そして仕上がった革靴を履いて自身の経営するレストランで食事をしてニューヨークへ帰って行く。ゴッドファザーを演じたロバート・デ・ニーロ、その人だ。